
N=87社、n=45社
1月のアメリカの大統領交代に関連して連日様々な報道がなされていますが、ビジネス面ではもっぱら関税政策が気になるところです。
この記事を書いている2/21にも、自動車(乗用車)の関税を現状の2.5%から25%程度へ引き上げるとのニュースを目にしたばかりですが、
アメリカ企業と取引をされている方や現地に拠点をお持ちの方はもちろん、
間接的にでも影響があるのか等、気掛かりな方も多いのではないでしょうか?
今回、弊社のコネクションを活かし、各社での状況や今後に向けた見解と対策について
当社が取り扱う海外メーカー各社ではどのような影響があるか、有無や内容について独自に調査を行ってみることにしました。
この数日の間に情報を入手できた海外メーカー45社からの内容を簡単にまとめてみましたので、ご参考となりましたら幸いです。
現時点での影響の有無

「はい」(影響あり)と答えたメーカー
台湾で2社、香港1社の計3社で影響があったとの回答でした。
取扱い商材としてはそれぞれコンデンサ、LED、コネクタとなります。
具体的にどのような影響があったかについて、この期間内に詳細な回答を得ることはできませんでした。
「いいえ」(影響なし)と答えたメーカーの背景
下記は影響がないと答えた16社の地域別内訳です。

商材の偏りは特に見られませんでしたが、回答の中で重複していた点や共通の要素として考えられる内容としては、以下の通りです。
- グローバルに拠点を持っている
- アメリカ以外の地域を中心に製造・販売を行っており、ビジネスにおけるアメリカへの依存度が高くない
- 取扱商材が関税引き上げの対象に含まれない
今後の影響予測
現時点では既に影響が出ていると答えたメーカーはごく一部に留まり、
多くの企業では、具体的な影響についてはまだこれからのことだろうと考えているようです。
今後どのような可能性があると考えているかについても各社に聞いてみました。
()内に回答メーカーの国名を記載しています。
- 中国を重要な生産拠点の一つとしているあるメーカーでは、近い将来、アメリカブランドのIC等での部材入手が課題となるのではないか (ドイツ)
- 中国工場からアメリカへの納入製品、反対にアメリカ拠点から中国へ出荷している製品にそれぞれ追加関税がかかってしまう (アメリカ)
- 短期的には、関税の影響を受けるのはアメリカの最終顧客の一部だと考えている。しかし、保護主義的措置が続くことで特に中国などの国との貿易摩擦が激化し、世界のサプライチェーンが混乱するだろう (香港)
- 更に関税が上がり、それに伴って製品価格も上昇するだろう (ドイツ)
- アメリカへの輸出量の減少 (台湾)
- アメリカによる中国へのIC輸出制限のおかげで、自社でより多くのビジネスチャンスを得られそう。一方で、生産コストの増加、需要増によって人員配置が追い付かないことが考えられる (台湾)
- 外国サプライヤーに対する市場参入規制の強化 (台湾)
- 米ドル高により価格設定リスクとサプライチェーンへの圧力が高まるのではないか (台湾)
- 世界的な関税引き上げが、原材料費の上昇、投資や調達の遅れにも繋がり、自社の競争力に影響する可能性がある (台湾)
- 国内回帰政策が進むことでアメリカ内での製造が増え、電子部品の需要も増えるのではないか (台湾)
- アメリカが強い分野への技術投資が活発になり、AIや半導体、量子コンピューター分野が部品の需要を牽引していくのではないか (台湾)
- サプライチェーンが東南アジアとラテンアメリカに移行し、多様なサプライヤーに利益をもたらす可能性があるのでは (台湾)
- 減税とインフラ投資により、アメリカでの発電機関連製品の需要が増加するのではないか (台湾)
- 保護主義と関税の引き上げにより輸出コストが上昇し、価格競争力に影響を与える可能性がある。通貨の変動と市場の不確実性はリスクとなるだろう (台湾)
- 中国、メキシコの市場ニーズは更に衰えていくように考えている (台湾)
- 良い点は、米ドル高による為替差益の増加。悪い点は、市場の不確実性 (台湾)
- 中国法人を持つ日系企業が他国へ生産ラインを移管する可能性があり、注文が減るかもしれない。その代わり、インドと東南アジアの生産ラインが増えると考えている (香港)
- 特定の業界 (テクノロジー、ヘルスケア、エネルギーなど) は、有利な規制や政府契約の恩恵を受ける可能性がある (非開示)
- リーダーが規制強化を推進すると、企業はコンプライアンス コストの上昇に直面する可能性がある (非開示)
各社で検討中の対策
- 他地域への拡販強化(挙がった地域:ヨーロッパ、日本、インド、ベトナム、マレーシア)(香港)(台湾)
- 関税の影響を受けない地域からの材料調達によるサプライチェーンの最適化 (台湾)
- 中国以外の拠点での生産を増やす (アメリカ)
- 他地域 (ベトナム、タイ)での工場設立 (台湾)
- 中国からアメリカへの直接出荷の回避 (台湾)
- 新たな製品ラインの確立 (台湾)
- アメリカの現地販売代理店やOEMメーカーとの協力強 (台湾)
- メキシコ-パナマのコロン自由貿易地域を利用してのアメリカ市場へのアクセス (台湾)
- 特定地域の顧客への供給対策として、複数拠点で在庫を持つ (アメリカ) (台湾)
- 高い品質で製品やカスタマーサポートを維持していく (非開示)
- 長期での契約締結、そのためのグリーン調達パートナー認定 (台湾)
- 柔軟なMOQ調整 (台湾)
- 輸出価格と支払条件の柔軟な調整(為替差損益の管理による財務の安定性強化)(台湾)
- 一部材料を以前よりも余分に確保していく
- 在庫を持たずにジャストインタイム方式で生産 (台湾)
- 中国製造品に課せられる付加価値税の増額分に応じて製品価格を引き上げてアメリカへ (台湾)
- (納期遅延を避けるために)以前よりも早めの出荷手配 (台湾) - ※近頃、アメリカ税関による貨物検査の頻度が高まり、検査時間も長くなっているとの情報
最後に
簡単な内容とはなりますが、現時点での調査結果の共有は以上となります。
多くの企業では現在までのところ具体的な影響は出ていないまでも、
将来的に影響が及ぶ可能性を感じながら状況を注視しているとのことでした。
数か月後にどのような変化が見られるか改めて調査を行ってみるのも面白いかと考えています。
※この調査結果は、日本ミック株式会社による独自の調査によるものです。
回答者の意見を反映しており、全ての視点や状況を代表するものではありません。
アンケートの結果は特定のグループの回答に基づいている点についてもご留意下さい。
